妊娠の時期に歯はどのようにしてつくられるか?
単一の細胞から構成されている原生動植物を除くと、我々、ヒトを含めて生物体は多数の細胞が集まったものである。その発生の初期においては、一個の細胞(受精卵)が新生児においては三兆個、成人に至ると五〇兆個の細胞体として活動が始まる。受精卵は、細胞数が2-的増加を示す。すなわち受精卵という一個の細胞から一個がニ個、ニ個が四個と増加するわけである。さらに胎芽は成長と分化を絶えず繰り返しながら、ヒトらしい胎児となるのは胎生一〇週の終わりごろである。妊娠初期の重要性は、この時期が組織分化期から形態分化期の時期に相当するからであろう。
エナメル器、歯乳頭、歯襄の歯をつくる組織を総称して歯胚という。胎生六週のころ、外胚葉からの上皮の増殖肥厚により歯堤が形成される。歯堤は、さらに膨隆増大して、歯胚の形成が始まり、エナメル器が形成される。さらにエナメル器を構成している上皮 細胞に分化が起こり、内•外Hナメル上皮、Hナメル髄、歯乳頭が形成され、釣鐘様形態となるため鐘状期の歯胚と呼ばれる。
続いてHナメル質、象牙質の形成とともに歯冠の形成が始まる。内.外ユナメル上皮はへルトウィッヒ上皮鞘を形成し、歯根形成を始める。硬組織の形成が進み、歯根が形成され始めると歯牙の萌出が始まる。みごとなバランスをとりながら歯冠の萠出と歯根形成がなされている。