胎児の歯のでき方(石灰化開始)とカルシウムとの関係
我々ヒトの組織の中でもっとも硬いところはどこであろうか。
モース硬度計で、歯、 爪、骨などを測定してみると、歯のエナメル質がモース硬度は6°~7°であり、人体中でもっとも硬い組織であることがわかる。
象牙質のモース硬度は4°〜5°でエナメル質よりやや軟らかいが、これは象牙質の有機質の成分含有量がエナメル質より高いためである。歯の成分は、無機質95〜97%、水分1.2〜4.0%、有機質0.4〜0.8(乳歯0.5~0.9%)である。無機塩類はリン酸カルシウム塩、あるいはリン酸マグネシウム塩の形で存在する。エナメル質、象牙質、セメント質は、化学組成はそれぞれ異なるが、無機質、有機質、水分よりなる。無機質中でもカルシウムは特に骨や 歯の石灰化に関与している。石灰化のメカニズムでは、血清中のカルシウムとリン酸の溶解度の積が問題となる。
この考えを基にロビンソンのアルカリホスファタゼ説やノイマンのエキビターシ説が主流を占めていた。
しかし、1960年代末に組織中に単位膜で包まれた基質小胞とよばれる小胞が発見され、その中のカルシウムイオンとリンイオンがアルカリ性ホスファタゼによってアパタイト結晶を形成する場合と、このようにしてつくられた核を基にして石灰化が開始される場合とがあると報告されロビンソンやノイマンの両説を同時に示唆している。
歯の石灰化の開始時期は胎生4ヶ月ころから始まる。歯の石灰化は歯冠の咬頭頂部、前歯では発育葉部から始まる。
象牙芽細胞、エナメル芽細胞により象牙前質、エナメル前質がつくられ、さらにカルシウム塩がこれらに沈着して硬化していく。